生前に相続問題を解決する!?生前遺産分割について
財産を持つ人が死くなった時に発生するのが相続問題です。
相続対象となる財産を相続人で分割して相続することになるのですが、誰がどの財産を相続するのかはもめることも多く泥沼の争いになることも珍しくありません。相続する財産についてスムーズに合意が形成されたとしても相続税の問題がありますから、全ての手続きを終えるまでにはそれなりの時間と手間がかかってしまします。
相続といえば本人が死亡して初めて手続きを始めるのが一般的な形ですが、新しい相続の形として注目されているのが「生前遺産分割」です。生前遺産分割とは本人の生前に遺産を分割することで、本人の意思を確認しながら相続財産を分割出来るという大きなメリットがあります。
ただし、生前遺産分割というのは法的な裏付けがある制度ではなく、たとえ生前に遺産分割に関する合意を形成して合意書を作成していたとしてもそれは法的には有効でなく本人の死亡時に改めて相続についての手続きを行わなくてはいけません。もし作成した合意書の内容を翻すような主張をされた場合は、改めて遺産相続について話し合いを行って財産をどのように分割するか決める必要があります。
現行の日本の法律では遺産分割を行うには「相続対象となる財産を所有しているものが死亡し相続が開始している」「相続人全員により行う」という二つの条件が満たされていなければいけません。生前に行われた生前遺産分割に関しては法的拘束力を持つものではなくあくまでも当事者同士の合意にとどまるため、生前遺産分割を法に基づいて執行することは現在のところ不可能です。
生前遺産分割についての合意形成をしておくことで、相続争いを一定程度防ぐ効果も期待できます。相続対象者を交えて遺産分割について協議しておけば、それぞれの意見を参考に希望を取り入れながら相続財産について調整することが可能になりますし、不満があるのならその場で異議を訴えることもできます。
全員の意見を取り入れて誰もが納得のいく財産配分を決定しておけば、法的拘束力のない合意書でもある程度は相続争いを抑えることができるでしょう。もちろん合意は無効だといわれてしまえば生前遺産分割合意書に強制力はありませんが、生前に話し合いの場を設けておくこと自体が遺産相続に関する不満を抑えるガス抜きの役割を果たすことになります。
生前遺産分割では死亡後の相続手続きの代わりにはなりませんが、生前遺産分割の合意書に基づいて生前贈与を進めておくことである程度の生前遺産分割を実行することは可能になります。生前贈与とは相続対象となる財産を生前に譲り渡す制度のことで、非課税となる金額に上限はあるものの財産を保有している者の意思に基づいて自由に贈与することができます。教育資金贈与信託や住宅資金贈与非課税制度、おしどり贈与といった特別な贈与制度を活用すれば多額の遺産を生前に分割して贈与しておくことが可能になります。本来の意味での生前遺産分割とは異なりますが、生前贈与を利用して本人が存命なうちに遺産を贈与しておけばより本人の意思を反映した財産の分配を行うことが可能になります。
遺産相続に関してだけではなく、相続放棄に関しても生前に手続きを行うことは認められていません。生前にどんな話し合いがあったとしても、相続に関する手続きは本人の死亡後に法律に基づいて行う必要があります。相続手続の中には期限が設けられているものもあるので、期限に遅れないよう注意してください。