相続税の節税をするには
相続トラブル防止は、節税になります。
相続税制度では、節税になる制度がいろいろありますが、これらは遺産分割協議が成立していないと利用できないことが多いのです。 |
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相続税制度では、節税になる制度がいろいろありますが、これらは遺産分割協議が成立していないと利用できないことが多いのです。
遺言を作成しないまま亡くなった場合、複数の相続人同士で、遺産配分でもめることが少なくありません。特に「遺産の大半が不動産である」「長男に財産の大半を相続させたい」「兄弟姉妹の仲が悪い」などの事情があれば、遺産分割協議でもめる可能性が高いと思います。
そのような場合に、具体的な財産の分け方を指定した遺言があれば、遺産分割協議ができなくても、遺言に基づいて相続税申告すればよいので、相続税法上の節税できる制度が利用できるようになります。
遺言書は、財産を誰に継がせたいかという両親の思いを明確に示すことができますので、いたずらに遺産争いが起こるのを防止できます。
なお遺言書は、まだ元気なうちに公正証書として残しておくのが良いと思います。70代以降の高齢になってからの遺言書作成は、認知症を疑われ、死後に遺言の効力で相続人間に争いが生じるなお可能性があるからです。また遺言は、公正証書であっても、いつでも撤回できることから後日複数の遺言が出てきて、係争になることがあります。
そのような意味では、遺言も万全ではありませんので、後記のような「遺言代用信託」との併用をお勧めします。
遺言がない場合、相続人間で遺産分割について話し合いをしなければなりません。
この話し合い(遺産分割協議)がまとまらないと、家庭裁判所に調停申立をしたり、調停でまとまらなければ、家庭裁判所での審判に移行したりすることがあります。
相続税における節税できる制度は、原則として相続税申告期限(相続人が相続開始を知ってから10ヶ月以内)までに、遺産分割協議ができないと利用できません。具体的には・・・
① 小規模宅地等の評価減の適用(詳細は別項⇒)
被相続人の居住用の土地や事業の用に供されていた土地については、相続税評価額の80%から50%の割合で評価を下げられる特例があります。「小規模宅地等の評価減特例」と言われるものですが、遺産分割協議の成立と相続税申告が、この評価減特例を利用できる要件となっています。
② 配偶者税額控除の特例の適用
夫婦のいずれかが亡くなり、配偶者が遺産を相続した場合、相続した遺産が法定相続分(相続財産の2分の1)相当額以下の場合には、相続税がかかりません。また法定相続分を超えても1億6000万円までは相続税がかかりません。これを「配偶者税額控除の特例」といいますが、遺産分割協議の成立と相続税申告が、この配偶者税額控除を利用できる要件となっています。
③ 相続財産である不動産の売却や物納について
相続税などの支払のために遺産である不動産を売却しなければならないとき、遺産分割協議を成立させて相続登記をしなければ不動産の売却もできません。なお不動産について遺産未分割状態でも相続人名義での法定相続分での相続登記ができます。しかし遺産分割協議ができない状態では、不動産売却に相続人全員の協力を得られない可能性が高く、売却が難しい場合が多いでしょう。相続税を金員で支払えないときに、不動産を物納する場合がありますが、物納は遺産分割協議ができていないと認められません。
④ 農地の納税猶予について
農地については、相続税の納税猶予制度が認められていますが、遺産分割協議がまとまらないと、納税猶予制度を利用できません。
農地については、遺言や遺言代用信託で農地の承継者を決めておくことが、農業経営の安定に不可欠です。
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この記事の監修者
弁護士・税理士・ファイナンシャルプランナー(AFP)
小林 幸与(こばやし さちよ)
〇経歴
明治大学法学部卒業、昭和61年に弁護士登録。現在は第一東京弁護士会所属の弁護士に加え、東京税理士会所属の税理士、日本FP協会認定AFP資格者。
日弁連代議員のほか、所属弁護士会で常議員・法律相談運営委員会委員・消費者問題対策委員会委員など公務を歴任。
豊島区で20年以上前から弁護士事務所を開業。現在は銀座・池袋に事務所を構える「弁護士法人リーガル東京・税理士法人リーガル東京」の代表として、弁護士・税理士・ファイナンシャルプランナーの三資格を活かし活動している。