遺産分割を工夫して節税する
節税できる遺産分割内容による相続税の計算例についてはこちら
節税できない遺産分割内容による相続税の計算例についてはこちら
1、相続人が複数いると、遺産をどう配分するか、話し合います。
亡くなった方(被相続人)が作成した遺言があれば、その内容に基づいて遺産分割できます。しかし相続人全員の同意があれば、遺言内容と異なる
遺産分割協議も有効です。
2、どういう遺産の分け方にするかは、相続人それぞれ希望があるでしょうが、遺産分割の内容を工夫すれば、相続税を節税できます。
具体例で説明します。
(例)乙さんが亡くなり、相続人が妻Xと長男Yと長女Zの3人で遺言は
ありません。長男と長女は既に結婚し、それぞれマイホームを購入し、乙さん夫婦と別居しています。
乙さんの遺産は、以下の財産です。
ⅰ)自宅である120㎡の土地と建物
(相続税評価額:土地4500万円建物500万円)
ⅱ)アパートとその敷地140㎡
(相続税評価額:土地5600万円アパート400万円)
ⅲ)銀行預金3000万円
この場合、自宅を妻Xが相続すれば特定居住用宅地(小規模宅地等)
として評価減の適用があり、相続税評価を80%減の920万円まで引き下げられ、相続税を節税できます。
けれども長男Yや長女Zが自宅を相続するときは、妻Xが相続する場合と違い、特定居住用宅地(小規模宅地等)として評価減の適用を受けるには、持ち家のないことが必要になります(いわゆる「家なき子」)。したがって、長男Yや長女Zが自宅を相続すると、特定居住用宅地(小規模宅地等)として評価減の適用を受けられません。
節税できる遺産分割内容による相続税の計算例
自宅土地建物を妻Xが相続し、アパートとその敷地を長男Yが相続し、預金を長女Zが相続することになれば、長男Yと妻Xについて、小規模宅地等の評価減の適用があり、さらに妻Xは配偶者の税額控除の適用がありますので、相続税がかなり節税できます。すなわち
① 自宅土地建物を妻Xが相続すると特定居住用宅地(小規模宅地)の評価減の特例が適用できます。
したがって妻Xの相続税の課税価額は1400万円となります。
土地4500万円×0,2=900万円
土地900万円+建物500万円=1400万円
② アパートと敷地を長男Yが相続すると貸付事業用地(小規模宅地)
の評価減の特例が適用できます。
したがって、長男Yの相続税の課税価格は3200万円になります。
土地5600万円×0,5=2800万円
土地2800万円+アパート400万円=3200万円
③ 課税される遺産総額は基礎控除額を引いた金額です。
1400万円(自宅)+3200万円(アパート)+3000万円(預金)
=7600万円
基礎控除額3000万円+(600万円×3人)=4800万円
7600万円-4800万円=2800万円(課税遺産額)
④ 妻Xの相続税額
2800万円×0,5=1400万円
(1400万円×0,15)-50万円=160万円(妻Xの相続税額)
妻Xには配偶者の税額控除の適用がありますので、1400万円
(法定相続分2分の1)まで非課税です。
したがって妻Xの相続税は0円です。
⑤ 長男・長女の相続税額
2800万円×0,25=700万円
700万円×0,1×2人=140万円(長男長女の合計相続税額)
節税できない遺産分割内容による相続税の計算例
自宅土地建物とアパートとその敷地を長男Yが相続し、預金を長女Zが相続し、妻Xが何も相続しないことになれば、長男Yについて、アパート敷地しか小規模宅地等の評価減の適用できず、さらに遺産をもらわない妻Xは配偶者の税額控除の適用がないので、相続税が増額になり、長男長女は以下のように計820万円の相続税を払うことになります。
5000万円(自宅)+3200万円(アパート)+3000万円(預金)=11200万円
11200万円-4800万円(基礎控除額)=6400万円(課税遺産額)
6400万円×0,5=3200万円
(3200万円×0,2)-200万円=440万円
(1600万円×0,15)-90万円=190万円
(190万円×2)+440万円=820万円
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この記事の監修者
弁護士・税理士・ファイナンシャルプランナー(AFP)
小林 幸与(こばやし さちよ)
〇経歴
明治大学法学部卒業、昭和61年に弁護士登録。現在は第一東京弁護士会所属の弁護士に加え、東京税理士会所属の税理士、日本FP協会認定AFP資格者。
日弁連代議員のほか、所属弁護士会で常議員・法律相談運営委員会委員・消費者問題対策委員会委員など公務を歴任。
豊島区で20年以上前から弁護士事務所を開業。現在は銀座・池袋に事務所を構える「弁護士法人リーガル東京・税理士法人リーガル東京」の代表として、弁護士・税理士・ファイナンシャルプランナーの三資格を活かし活動している。